こんばんは
今日は2/29で富士急の日ですが容赦なく名鉄の話をしていきます(そもそも富士急を持っていない)

CIMG8603


さて、本日はそれまでの名鉄をガラッと変える役割を果たした助っ人、3880系をお送りしませう。

CIMG1040


高度経済成長期、名鉄の輸送量は増加の一途を辿っていました。しかしマイカーへの対抗上、当時の名鉄経営陣の方針として「クロスシートに座って通勤」という理想像があり、1970年代半ばに至るまで2扉クロスシート車が製造及び改造されていました。しかし1973年のオイルショックによりマイカーから鉄道に乗客が移った事を受けて名鉄のラッシュ時の利用は急増。もはや2扉クロスシート車での運用は限界となり、本格的な通勤型電車の導入が望まれていました。
同じ頃、戦後すぐに製造され東横線や目蒲線で運用されていた東京急行電鉄(東急)の運輸省規格型電車3700系電車20両が売却される情報が名鉄にもたらされ、一刻も早く輸送力増強に着手したい名鉄はすぐさま譲渡を希望し、此処に「大手私鉄間の車両譲渡」という異例の出来事が発生する事となりました。
なお東急からは他にも5000系「青ガエル」の譲渡も打診されましたが、名鉄に従来より在籍する3800系が同じ運輸省規格型車両である事に加え、主電動機もほぼ同一の物を使用している事により敢えて旧形式の3700系譲渡を希望したと言われます。

CIMG7020

こうして、スカーレット一色化・標識灯の角型化など最小限の改造で名鉄にやって来た3700系は3880系と名を変え、輸送改善に大きく貢献する事となります。名鉄においては、戦時中に製造された3550系以来約30年ぶりの3扉・オールロングシート車となります。
当初は他のAL車との共通使用を目論んだものの、主電動機の問題により名鉄AL車特有の高速性能に劣る事などから共通運用は放棄され、名鉄では珍しい2M1Tの3両編成を組んで運行されました。3700系20両と、不足する1両は他形式から編入されて総勢7本21両が1975年から1980年にかけて就役しましたが、元々高経年の車両だった事に加え先述の通り他形式との共通運用が出来ない事などから、全車が出揃った翌年の1981年より廃車が始まり、導入からわずか11年後の1986年までに全廃となりました。

CIMG8619

名鉄での活躍期間は短かった3880系ですが、2扉クロスシート車4連で運転されていた列車を本系列の3連に置き換えたところ遅延が無くなったというエピソードがあるなど通勤輸送に特化した3扉ロングシート構造の絶大な効果を発揮し、その後名鉄高性能車初の3扉車6000系や、オールロングシートとしたVVVF車3500系の投入に繋がるなど、2扉クロスシート車に固執していた名鉄を3扉通勤車の導入に転換させるきっかけを作り、特にラッシュ時の輸送改善に大きく貢献した功労者とも言うべき存在です。


・模型について

CIMG1041


それは、ラッシュ時の激しい混雑に喘ぐ名鉄に颯爽と現れた救世主。少々くたびれてはいたが、自慢の3ドアロングシート構造で次々と乗客を捌く。今までには無かったスムーズさだ。
彼らは、来たる新時代への方向性を名鉄に示し、瞬く間に去って行った。

そう、彼らの名は…

3880系


CIMG8607

…というキャッチコピーが似合うかどうかは不明ですが、名鉄の一大転換のきっかけとなった3880系。
まだ何処からも完成品で製品化されていませんが、当社では鉄コレの改造により製作しました。
詳しくは→紅(あか)色になった東急電車の物語(+α)

CIMG1915CIMG1916
取り出しましたるは電車市場限定の東急3700系。
実は売ってる会場に足を運んだ事が有るのですがその時は此処まで名鉄に傾倒してなかったんですね…その後市場からも消えレアアイテムと化していましたが、或る時アキバで2箱が並んでいるのを見て迷わず1箱お買い上げ。ただし値段も相当しました(※昨今のグリ完よりかはまだ安いが)。

CIMG1895CIMG1896
購入直後に並べてみたの図。どう見てもまさしく東急ですね。池上線です。
これをスカーレットに塗って行こうと言う話です。

CIMG2423


作業中風景。

CIMG2753CIMG2758
そして完成(省略しすぎ)。
スカーレットに塗ると綺麗に名鉄に化ける所が不思議なものです。

CIMG6916CIMG6915
主な改造内容は
・車体をGM27「レッドA」で塗装
・行先サボ貼付
・床下機器は種車の物を基本的に活かすが一部並べ替えを行いGM9「ねずみ色1号」で塗装。
・ヘッドライトは余剰品を用いてシールドビーム2灯化
・乗務員室仕切追加。
・中間部のKATOカプラー化
・Mc車にジャンパケーブルを追加
とかなり力を入れて改造しました。

CIMG5445


視線を落とすとかなりリアルに見えますね(自画自賛)。先述の通り他形式との連結が無いのでカプラーはダミーのままとしていますが、実物は3880系同士の6連がラッシュ時に走ったようなのでそれも再現して見るのも面白そうです。高いですが。
なお前面下部の標識灯は名鉄入線時に同社標準の角形に交換されていますが、模型では原型のままとしています。

編成細見

1モ3885

モ3885
岐阜・弥富方制御電動車。3880系は床下機器の方向の従来車と揃える関係で、他の名鉄旧型車とは異なりMc車が岐阜方を向いている(=SR車以降と同じ)のが特徴です。

2モ3886

モ3886
編成中間に位置する制御電動車。ですがライトなどは撤去されており実質中間電動車となっています。模型ではこの車両を動力車としています。

3ク2883

ク2883
豊橋・河和寄り制御車。3両中2両はドア窓が小さいのが特徴です。

1975年の一次導入車で最後まで残ったモ3885-モ3886-ク2883のナンバーを一応振っていますが、資料として使う「私鉄の車両11 名古屋鉄道」は3880系全廃直後の発行のため詳細な資料が無いので、半分位はフリーランスとして自由に組んでいます。

CIMG5474


先述の運転台撤去部分は灯火類も完全に撤去されていますが乗務員室扉は残存する等中途半端に先頭車時代の名残が残っているのが面白いところです。

KS33E


台車は従来車とは異なり、東急時代のままのKS33Eを履きます。元々黒色台車でしたがグレーに塗り変えています。GMのグレー床下は鼠色1号が指定されていますがどうも明るすぎます。ダークグレーでは暗すぎるのでその中間色にしてやりたいところです。
この台車は3800系全廃後従来型AL車に流用され、捻出したD-18台車でHL車の雑多な台車を淘汰するのに一役買っています。

CIMG8600

豊橋・河和寄りは「岡崎」表示に。
1980年代初頭の写真集で見たものを再現しています。

CIMG5448


岐阜・弥富寄りは「岩倉」表示に。実車は高速性能に劣るため普通列車中心の運用だったようで模型でもそれを再現しています。

ギャラリー

CIMG2755


非貫通側を先頭に走る3880系。撮影は今はなき横浜ビブレのポポンデッタです。
もう閉店(=移転)から1年も前なんですね。

CIMG6918


お次は熊野前の「モデル・トラン・ブルー」さんにて一枚。
力を入れて製作しただけあってリアルな風景の中で走らせると一掃カッコよく見えるのでよきです。

CIMG5470


個人的には貫通顔の方が好みですね。
前パンを振りかざして犬山線を快走します。

CIMG2767


踏切待ちの光景。待つ自動車もまた赤色。

CIMG6923


築堤上を行く3880系。

CIMG5452


田園風景の中を走る3880系。
やはり見た目からも名鉄旧型車の中でも異質の存在です。

CIMG8617


東京のローカル区間をのんびり走る生活から一転、名古屋の地でかっ飛ばす生活を送る事になった東急3700系。リタイアを控えた老兵にとっては思いもよらぬ余生であった事でしょう。

CIMG5454


2019年、かつて活躍した横浜へと里帰りする事となりました…の図。

CIMG2761CIMG2763
並びの図。先ずは同じAL車3800系より。
車体長さも外見もほぼ同じですが先述の通り連結しての走行は不可能。それゆえ3800系よりも先に淘汰されてしまった3880系ですが、3800系を置き換える事となる6000系・6500系の設計に多大な影響を与える事となります。

CIMG2770


「赤マムシ」3400系との並び。
3400系がチートレベルの若返り工事を施されているので、実際は10年以上年上だと言う事がにわかに信じられなくなりますね。

CIMG8620

3730系との並び。
幅広両開き2ドア・変則転換クロスシート設置と名鉄なりのラッシュ対策が施された3730系グループでしたが、それでも激しいラッシュを捌くには難があり、結果導入されたのが3880系となります。
3880系の投入が、約40年後に達成する2扉転換クロスシート車完全引退の第一歩となりました。

良くも悪くも他の私鉄と変わらぬ姿となった現在の名鉄ですが、やっと「時代に追いついた」と言うべきなのですかね…2扉転クロ車のいない名鉄はどうも寂しいです。

最後までご覧いただきありがとうございました。